2019年12月25日

高校中退・不登校生徒の「その後」


前回の記事では、若者就労支援機関に訪れる若者には、中退経験者や不登校経験者が多いこと、そのうち、特に高校生の中退・不登校生徒の現状や理由・悩みについて見てきた。

本稿では、中退・不登校の「その後」、具体的には「ひきこもり」や「非正規労働」、「無業」のリスクについて、見ていくことにする。

 

中退・不登校とその後の「ひきこもり」


若年のひきこもりに関する内閣府の調査によると、広義のひきこもり状態にある者の中には高校・大学等を中退した人が多い(24.5%)ことが分かる。

(広義とは、自室や自宅にこもりきりの者だけでなく、「ふだんは家にいるが,自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」者を含む)

また、「ひきこもり」の状態になったきっかけへの回答として、「不登校」という回答が最も多い。

(『若者の生活に関する調査報告書』平成28年9月 内閣府政策統括官(共生社会政策担当)23【本人票】ひきこもりの状態になったきっかけの項より作成)

 

中退・不登校ともに、社会とのつながりを失うきっかけとなっているおり、その後再び社会とのつながりを得にくいことにより、「ひきこもり」へとつながっている現状があることが分かる。

 

中退・不登校とその後の「働く」


また、別の調査(東京都教育委員会が都立高校の中退者に対して、追跡して「その後」を聞いた調査)では、高校中退後、無業状態にある人も一般に比べて多かった。加えて、主に仕事をしている者の中でも非正規就労の割合は約85%に上る結果となった。

 

これらの調査は、不登校・中退の「その後」に実際に待ち受けている困難の一面を示していると言えよう。

そういった「リアル」に対して、当の本人たちも敏感にとらえている。

 

中退者が抱える「今後の不安」


下記のグラフは、中退者への同調査で、「これからの進路について、これから先、次のようなことが起こりやすくなると思いますか?」という設問への回答である。

「自分の趣味が続けられる」というメリットとしての回答が最も多い(「とても」「まあ」あてはまるの合計が6割超)ものの、「将来の見通しがつかなくなる」「収入や暮らし向きが悪くなる」「会社できちんと働けない」といった学業や仕事などの進路へのリスクを半数以上が認識している。

 

なかなか届いていない中退後へのサポート


そういった仕事や進学の悩みについて、相談に乗ったり、訓練・学習機会を提供している各機関の利用状況についても、本調査時点では低かったことが分かる。

(『「都立高校中途退学者等追跡調査」資料編』平成 25 年3月東京都教育委員会より引用)

同調査内の、これらの機関を利用した人へのインタビュー調査では、「親に奨められて」「退学した高校の先生に紹介されて」という回答が見られるように、身近な周囲とのつながりがどれだけあり、こういった社会資源に関する情報や働きかけがどれだけ得られるかで、サポートの有無が大きく変わってくるだろう。

 

「その後」の困難・不安に応えるには


中退や不登校等により学校を離れた時、その生徒が友人内や家庭で孤立してしまう、あるいは、反社会的なつながりを持ってしまう、一方、家庭内では保護者もどう関わっていいか悩み、(それまで先生に相談していたとしても)相談先がなくなってしまう、そうして「ひきこもり」「無業」「不安定就労」になり、どうにかしたいと思っていても、どこからどうしたらいいのか、社会の「壁」の前に立ち尽くしてしまう若者がいる。

そういった若者を支援するために、地域若者サポートステーションなどの支援機関は存在しており、その結果が、支援機関来所者の2割が中退経験者、4割が不登校経験者という数字にも表れている。

しかし、可能ならば、より早い段階で、深刻な状況に陥る前に、社会のセーフティーネットにつながることが望ましいのではないか。

そうした目的の下、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーなどの拡充が進められ、学校内での対策も進んでいるが、学校内だけですべてを対処しようとしても限界がある。

その中で、「学校外」の担い手として、様々なNPO等による地域での取組も進んできている。

 

「あの生徒最近学校に全然来ていないけど大丈夫だろうか?」

「辞めちゃったあの生徒は今ちゃんと元気でいるだろうか?」

生徒が学校から離れてしまうと、先生たちから彼らは見えなくなってしまう。

 

次回の記事では、高校中退により、学校を「辞めてしまった生徒」がどのように再び社会とつながりを結びなおしたのか、具体的な事例と取り組みを紹介する。

記事:問題を起こして高校中退した彼を待っていた「大人」とは

 

 

(執筆:育て上げリサーチ)

 

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