2015年08月10日
対人スキルに課題を抱える 就労経験なし無業者
~若年無業者が抱える課題―職歴ごとの特徴~
職歴がない場合には、職業スキルの課題以前に対人スキルに課題を抱えている割合が高い。職歴がない者の中には、そもそも対人面に課題を抱えるために働く経験が持てなかったという者もいることだろう。職歴がない無業の若者へ就労支援では、対人コミュニケーション・社会性に不安がある、といった課題への支援が必要である。
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本トピックスでは、NPO法人育て上げネットが実施した調査研究『若年無業者白書~その実態と社会経済構造分析~』を基に、無業の若者についての調査研究結果をご紹介しています。
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無業の若者は就労に関してどのような課題を抱えているのだろうか。
過去に、トピック「なにがきっかけで若年無業者になるのか~支援期間へ来所する目的は「働く自信をつけたい」が5割と最多~」において、若年無業者全体と無業3類型ごとの来所目的の傾向を明らかにした。
さらに、トピック「無業の若者4人に3人は過去に就労経験あり~若年無業者の職歴データ分析~」では無業3類型と職歴の関係を分析している。
今回は、職歴がない若年無業者の来所目的に着目し、どのような課題を抱えているかを明らかにする。
来所目的のうち、「社会性を身につけたい」「集団行動力を身につけたい」「コミュニケーションの苦手を克服したい」への回答傾向を職歴ごとにみる。
来所目的「社会性を身につけたい」と答えたものを職歴別にみると、正社員歴ありの人は22%・非正規職歴のみの人は36%、職歴なしの人は37%となっている。
来所目的「集団行動を身につけたい」と答えたものを職歴別にみると、正社員歴ありの人は13%・非正規職歴のみの人は19%、職歴なしの人は22%となっている。
来所目的「コミュニケーション苦手を克服したい」と答えたものを職歴別にみると、正社員歴ありの人は27%・非正規職歴のみの人は38%、職歴なしの人は44%となっている。
「社会性を身につけたい」「集団行動力を身につけたい」「コミュニケーションの苦手を克服したい」、職歴をもたない若年無業者がこれらに不安を抱えて来所し、支援を求めている姿が確認できるかと思う。職業スキルの課題以前に、対人コミュニケーションや集団行動・社会性といった対人面の課題を抱えているのである。
コミュニケーション・集団行動・社会性、これらはいずれも職場で基本的な能力として求められるものである。職歴がないためにこうした能力が獲得できなかった者のほかに、これら能力がなかったために職歴が獲得できなかった者も少なくないだろう。こうした課題を抱えている無業者は、たとえ求人が潤沢に存在しても働くことができない層の若者である。これは「無業の若者は働くことへの意欲がない」という無業の若者イメージとは異なるものではないだろうか。
対人面の課題への支援として、グループワークを通してコミュニケーションへの自信をつけていく。仕事体験を通じて、作業指示の出し方・受け方、仕事で分からない時の相談の仕方など、職場でのコミュニケーションを経験する。こうした支援は一見「まどろっこしい」ように見えるかもしれない。しかし、ここで明らかにしてきたように、職歴がない場合には就労以前の人との関わり・社会参加に課題を抱えている割合が高い。「働き始める・働き続ける」を見据える中では上記のような対人スキルに関する支援が求められるのである。