(14衆院選 課題ルポ)格差問題 生存ぎりぎり 支援充実を
衆院選は14日の投開票日に向けて終盤戦に入った。多摩地区でもアベノミクスの評価などを巡って舌戦が繰り広げられているが、経済格差是正を大きな争点の一つとして訴える候補も少なくない。若年無業者(ニート)や路上生活者らを支援する現場で、格差問題と向き合う人たちの思い聞いた。
立川市の「育て上げネット」は、若者向けの就労基礎訓練プログラム「ジョブトレ」を実施するNPO法人。現在は、学校を中退したりパワハラで勤め先を辞めたりして、社会から遠ざかった19~37歳の38人が受講している。
仕事への心構えを学び、企業実習など段階を踏んで就職を目指す。公示翌日の3日には、清掃を請け負っている立川市内のマンションで青木光信さん(28)らスタッフと、10~30歳代の受講者5人が作業にいそしんでいた。
進路を決められないまま高校を卒業してしまったという男性(19)は「今まで職に関して無知だった。自分に合った仕事を見つけたい」と、プログラムを通じて前向きになれたという。
04年以降で約250人が受講し、修了者の約80%が就職、うち9割近くが職場に3年以上定着している。スーパー「西友」(北区)も賛同し、低所得世帯(年収350万円未満)でニートの若者受講費を助成し、店舗で体験実習を受け入れる支援を昨年から実施。この1年で13人が利用し、11人が仕事に就いた。
同社はさらに最大15人分を助成し、交通費も新たに補助する方針で、同ネットが13日に説明会を開く。同ネットのジョブトレ担当部長、蟇田薫さんは「若者の置かれた状況に応じ、国が就職などを支援する体制は不十分。日本は一度社会から離れると復帰が難しい。無職になっても孤立せず、不安のない世の中になってほしい」と願いながら、論戦を見守っている。
(2014年12月11日付 読売新聞より抜粋)