ジョブトレ・ITコース座談会(その2)
ジョブトレ・ITコースはどんなところ?
座談会(その1)では、「実はジョブトレに参加することにためらいがあった」と告白してくれた卒業生のみなさん。内心では「仕方ないから参加した」ところがあったようです。
では、実際に参加してみてどうだったのか、ざっくばらんに話していただきました。
左から
岩下 明夫(いわした・あきお)さん 36歳 ジョブトレ・ITコース第4期卒業
安富 仁志(やすとみ・ひとし)さん 30歳 ジョブトレ・ITコース第3期卒業
中村 健(なかむら・けん)さん 21歳 ジョブトレ・ITコース第5期卒業
村木 昌司(むらき・しょうじ)さん 22歳 ジョブトレ・ITコース第6期卒業
黒川 武(くろかわ・たけし)さん 31歳 ジョブトレ・ITコース第6期卒業
プロフィールは取材当時のものです。
「一番苦手だった人づきあいが一番楽しい思い出になった」
——前回は、「ジョブトレにあまり乗り気ではなかった」というお話も出ましたけれど、実際に参加してみてどうだったのでしょうか?
——まずは、「楽しかったこと」を教えてくれますか? もちろん「楽しかったことなどない」というお話でもOKです(笑)。
中村 自分はすごく同期の人に恵まれたと思います。みんなでひとつのものを作る課題があるんですが、いろいろ話し合って、相談し合って、少しずつ積み重ねていくことは、今までにない経験でしたね。
「仕事」という名目のもと、みんなで進めていくことがすごくおもしろかったし、楽しかったんですよね。
特にプログラミングをやるとなると、実際にミーティングをしっかりして、「今はこの段階まで来てる」とか、「ここの部分がまだ終わっていない」と確認し、解決していくことがすごく大事なんですね。
それはアルバイトでは得られない経験でした。 細かい部分までしっかり取り組んでいったので、本当にみんなで作っているという感覚があり、すごく新鮮でした。
「書店のアルバイトとはちがって、もの作りのおもしろさがあった」と ジョブトレ・ITコースを振り返る中村さん。
村木 僕の場合は、単純な話ですけれど、知り合いが増えて、コミュニティの輪が広がったと思います。
ここに来るまで知人は減る一方だったので(苦笑)、そういう意味で、知り合いができて、行く場所が増えたことはいい経験だったんじゃないかな、と。
今の中村さんの話にもありましたけれど、僕たちの期も適材適所、幅広くいろいろな方がいました。
自分は不登校だったし、学生時代に人と関わろうとしてこなかったので、「過ぎ去りし青春をもう一度」……みたいな気持ちになりましたね(笑)。
とはいえ、僕には不登校経験があるから、もともと同世代の人が苦手だったんです。
でも、ITコースのなかでは、自分は比較的に年が下のほうで、まわりが落ち着いた年上の方だったので、接しやすかったですね。
安富 今、村木さんが「青春」と言いましたけれど、私も似たような感じでした。大げさですが、部活の延長みたいな……。グループワークのなかで、自然にコミュニケーションできた。今思うと、何気ない雑談がけっこう楽しかったなと思いますね。
普通に世間話をすることができたのは、当時の自分からすると大きな進歩でした。入ったときには自分から話しかけるのが得意ではなかったのに、卒業するときにはどうでもいい話を自分からふれるようになりました。
実は、IT コースの仕事体験に入ってから、ちょっとしたトラブルがあり、1 週間ほど休んでしまった時期があるんです。もう一度がんばって通うか、それともここから逃げ出すか……精神的に厳しい時期でした。
そんなときに、スタッフから連絡をいただいて、励まされて……。がんばってもう一回行ってみようと思うことができました。あのときのことは、今、本当に感謝しています。
右から、中村さん、村木さん、ジョブトレスタッフ、岩下さん、黒川さん、安富さん。
黒川 たしかに「人」というのは大きいですよね。
もともとの知人や友人は会えるとしても土日で、平日の間はずっとひとりでいるという時期が長かったんですけれど、こちらに通うようになって、平日も普通に人と話すという機会が増えましたからね。
それまでの時期と比べると楽しかったなと思いますね。
岩下 プログラムのなかに、「ITの仕事を経験する」というのがあって、それは「育て上げネット」法人内の課題を受けて、プログラミングで解消するというものですが、そのときのことをいまだにずっと覚えていますね。
自分たちの期は4人しかメンバーがいなくて(笑)、コミュニケーションを取るのもなかなか大変でした。プログラミングのやり方もけっこう自分たちに任されていて、期限があって、それなりのものを出さなければならないなかで、イヤでも話し合わざるを得ない(笑)。
コミュニケーションが得意な方がいるわけではなかったですし、それまではあまり話す機会もなかったんですけれど、できるだけ話すようにして……。本当に大変だったんですけれど、今思うと、それが楽しかったですね。
「平日に人と話せる、どこかへ行けるという機会が、それまではまったくなかった」という黒川さん(左)。右は岩下さん。
「仕事」そのものを疑似体験する「ITの仕事経験」が大変だった
——けっこう楽しかったことが出てきますね。では、逆に、「イヤだったこと」「つらかったこと」をお聞きしましょうか。
黒川 今、岩下さんが「楽しかった」と言った「ITの仕事経験」が、僕にとっては大変でした(笑)。
予定されてるコマ数が限られているのに、それに比べて作らなければいけないものが「これ、規模が大き過ぎないか?」みたいなもので……(笑)。最後のほうは、気持ちもいっぱいいっぱいになってしまって、「サービス残業」ではないけれど(笑)、自主的にITコースのお休みの日にも来て、ちょっと作業したりしてましたね。
岩下さんが言うように、今思うともちろんいい経験なんですけれど、当時の気分としては「大変だな」とつくづく思いました。
中村 たしかに「ITの仕事経験」は大変でしたよね。
依頼を受けて作業しているとき、自分は集中力が本当に持たなかったんですね。8人のチームで、ほかの7人がすごく集中しているのに、自分はしょっちゅう出て行くし、休憩するし……。
みんな、しっかりVBAを教科書から学んでいるんですけど、自分はつまみ食いでしか学んでいないので、どうしようかなと思うばかりで……。ほかのメンバーが「じゃあ、この部分をやってくれれば大丈夫」「ここのところをお願い」と、自分にもできそうなところを回してくれたので、そこは助かりました。けれど、「やりたいけれどできない」というジレンマを抱えたのはけっこうつらかったですね。
岩下 いろいろな人が集まれば、それにともなって自然と役割分担ができていくものかもしれませんね。
でも、自分たちの期は4人しかいなかったから(笑)。
自分の仕事の進め方をほかのメンバーに相談するとき、たった4人しかいないのに、うまく自分の考えを伝えられなかった。そういうところがもどかしいというか、大変だったというか……。「どうやって話せば伝わるんだろう」と感じることが多かったですね。 ただ、その経験があったので、人に話すときにどういうふうに話せばいいか、勉強になりました。
「ITコースってこんな感じでしたよね?」……という中村さんの説明にうなずく岩下さん、黒川さん。
同じ目標を持つメンバーとのチームワーク
——よく「ジョブトレのITコースってどんな雰囲気ですか?」と聞かれます。みなさんはどう答えますか?
村木 うーん、その質問は難しいですね。
その期に集まった人たちの雰囲気に左右されるのではないかと思うので……。
ただ、ある程度同じような境遇の方々が来ていると思うので、そういう意味での安心感はあると思います。
自分も最初は緊張しましたが、その安心感が頭の片隅にあったからこそ、いつもより少し大胆にほかの人に話しかけることができました。
岩下 そうですね。みんな「現状を何とかしたい」という気持ちで来ていると思うので、そんなにイヤな雰囲気にはならないと思います。
黒川 初回はまず自己紹介からはじまりますが、自己紹介すること自体がもうドッキドキなんです(笑)。でも、スタッフはそこら辺をよくわかってくれているので、フォローしてもらえる。こうしたところはすごく助かりましたね。
中村 でも、それでいて、けっこう「放任」なんですよね(笑)。そのバランスも良かったのかな、と。
先ほど岩下さんが「イヤでも話すしかない」とおっしゃっていましたけれど、本当にそうで、依頼を受けても誰かが何かをしてくれるわけではないので、「なんとかしなくちゃいけない」という思いがみんなのなかに自然と生まれてくる。そうなると、どういうメンバーであれ、チームワークは生まれるだろうなとは思います。環境的に生まれざるを得ない(笑)。
安富 みんな初めて同士なので、最初は探り探りの雰囲気ではじまって、でも、最終的には協調性と自主性が自然と育まれる……ITコースはそんなところですね。
高校のとき、文化系の部活に入っていたという安富さん(左)は、「ITコースの雰囲気は部活にちょっと似てる」と言う。