育て上げブログ

2021年11月11日

【卒業生の声】マサトさん(仮名、33歳) ジョブトレなど約2年間利用


 

「30歳で死のう」から、「自分ってわりとデキるな」と思えるまで


 

 2012年から育て上げネットに繋がり、インターンを経て就職したのがマサトさんです。これまでも、「ひきこもりを卒業した若者」として、保護者相談会やメディアの取材でその体験を語ってきました。よどみなくことばが出て生き生きと話し、自信が見え隠れする、ジョブトレOBとしてはかなり異質な存在です。その一方で、社会から隔絶されていた時期の苦しみや、結構足が重かったジョブトレ時代、働き続けることの厳しさなども、率直に話してくれました。

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 25歳くらいで「パソコン講座」に参加したのが、育て上げネットに繋がった最初です。大学がおもしろくなくて4年で中退してから、仕事の探し方も分からず、バイトする意味も見出せなくて、家でぶらぶらするようになりました。コンビニとか、大学時代の友だちとたまに飲みに行くとかはしていて、ずっとひきこもりっ放しではなかったです。でも、社会は自分を必要としていないし親の負担にもなるので、ネットに出ている「30歳が就職のリミット」説をうのみにして、30歳で自殺しようって、何となく考えていましたね。

 兄と同室だったので、仕事に行く人の邪魔にはならないように、朝起きて夜に寝てという生活リズムで過ごしました。家族が出かけたあとはゲーム三昧……と言っても、同じソフトをひたすら使って、時間をつぶすだけ。他に何もすることがなかったので。

引きこもって1年くらいしてからかな、母が「結」に通いだしたんです。ある日「朝の洗濯くらいちょっとやってくれない?」と母に頼まれて「あー、どっかで何か仕込んできたなぁコレは」とは思いましたが(笑)立場も弱いから、それからは家族全員の洗濯を毎日やりました。少しすると週1回の食事作りも言われて。習慣化していけば、そういうことは苦ではなかったです。

そのうちに父が「相談するところがあるから、行ってみないか」と。すごぉーくイヤだったのですが、「またブチ切れられても面倒だしなー」と思って、いっしょに「結」に行きました。そこからパソコン講座に通うことになり、さらにプレップ、ホンキの就活、ジョブトレ、そしてインターン……と、次々に参加しました。どれも最初は「これが終わったらまた引きこもろう」って考えているのに(笑)、「次は何するの、することないでしょ」と育て上げの人と親に言われ、背中を押されて次のステップに行くパターン。ひきこもりに戻りたかったというより、作業とかあれこれが全部、もうとにかく面倒くさくてかったるかったというのが本音です。

ただ、ジョブトレでスタッフや他の利用者みんなといっしょに何かをやるときの、学校みたいな集団生活感とか、家族以外の人と話すのは楽しかったですね。あと、作業とか課題が結構こなせたんですよね、私は。プレップでの単純な手作業から、援農とかの肉体労働まで。すごくほめられるし、自分でも「おお、頭脳派と思っていたのが肉体派もいける」みたいになって(笑)。ジョブトレで過ごした7か月くらいの間に、地に落ちていた自己肯定感を、だいぶ取り戻せたように思います。

そろそろ就活の準備かなという頃、「ここにインターン行かないか」と言われたときも、就職したい気持ちは正直薄かったんですけど(笑)、流れに乗りました。昔から私は複数の中から何か選ぶのが苦手なので、一択で後押しされたのがよかったのだと思います。インターン先では、代々のインターン生がやってきた仕事を、自分ならどれだけ効率よくできるか、ゲーム感覚で取り組んだりしていました。結局、その職場にアルバイトで入って、少したって正社員になり、今年で6年目を迎えます。

 私はもともとすごい人見知りなのに、顧客相手のやりとりなどで、今の仕事はすごく気を使います。職場の雰囲気はすごくいいんですが、仕事はやっぱり、ひどく辛い側面がある。そういうとき、ジョブトレは卒業生が週末に顔を出せるシステムなので、コロナ禍の前までは毎週来ていました。「仕事辞めたいっスよ~」とかってスタッフに愚痴ることが、ストレスの解消になっています。

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【スタッフ・阿部より】
僕は10年ほどジョブトレでスタッフをしていますが、マサト君のような受講生は珍しい! 自信があって、自分の考えをハッキリ伝えてくるタイプです。時々話が熱く盛り上がり過ぎて、周りが戸惑うこともしばしば。「理想の自分像」がとても高いから、悩んだり苦しんだりもするのだと思います。


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