育て上げネットでは、若者や子どもたちに対して何か機会を提供するとき、交通費など、一般的には自己負担が当然とされる費用をできる限り提供するようにしています。
特に、就労支援は一回、二回で終わるものではなく、自宅と支援施設、インターンシップ先などを含めると、総額でそれなりの交通費となるからです。私たちの社会では、交通費等は「実費負担の原則」が当たり前という認識があり、何かの参加や利用が無料であれば、あとは個人の選択(≒自己責任)でまとめられてしまいがちです。
例えば、若年者就労基礎訓練プログラム「ジョブトレ」は有料のプログラムです。月額費用をいただいて支援しています。ただ、その設計は応能負担型を採用しており、支払うことが可能な若者および家庭にはお支払いいただきますが、そうでない場合には無償の枠を準備しています。
これらの無償枠は主に個人/企業からの寄付金を充当する形で開いています。
ある企業さまからジョブトレの無償枠としての助成をいただきました。一年目、たくさんの若者が無償枠を使い、就労していきました。しかし、利用相談の段階で交通費が支払えないという声もたくさんありました。
そこで企業さまと相談して、無償枠に加えて自宅と現場、インターンシップ等にかかる交通費を支給することで合意しました。それ以来、交通費が拠出できず、働きたいけれど支援を受けることを断念していた若者がその無償枠を多く利用しています。
2014年:参加者13名 交通費支給者0名 (交通費支給なし)
2015年:参加者16名 交通費支給者15名 (以下、交通費支給あり)
2016年:参加者15名 交通費支給者15名
2017年:参加者25名 交通費支給者22名
2018年:参加者27名 交通費支給者26名
2019年:実施中
そして、この枠組みを利用した若者(原則3か月)の90%が就労し、いまも元気に働いています。就業分野はさまざまですが、少なくとも「交通費支給」がなければ出会うことができなかった若者です。
※どのような若者/家庭が交通費支給を受けたのかなど、詳細はこちらを参考ください。
このような実例を、今回、政府が取り組む「就職氷河期世代支援プログラム」においても交通費等の支給を実現していただけるよう提言をしていたところ、2019年12月23日に発表された「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」で、その支給が実現することになりました!!
実際、交通費支給できるようになりましたが、具体的な運用は各自治体の企画判断に委ねられていますので、引き続き、交通費を出すのが簡単ではないひとたちが、社会に参加したい、働きたい気持ちを実現するためのアクセシビリティについても取り組んでまいります。
理事長 工藤 啓