最近、これまで接点のなかったひとたちとのありがたい出会いが増えました。理由は、少年院との連携、少年院に在院する少年、退院した少年の更生自立に取り組み始めたことです。
育て上げネットに相談に来られる方の中には、少年院いた経験を持つ若者はこれまでもいましたし、そもそもご本人がそう言わなければわかりません。わざわざ「少年院に入られたことがありますか?」と聞くこともありません。
しかし、ここ数年で少年院との連携が深まり、メディアに取り上げていただき、自分たちでも発信するようになったことで、多くのひとに知っていただけるようになったのだと思います。
そもそも私たちが少年院との連携を求めたのには理由があります。
さまざまな形で「困っているひと」がいるということは誰もが想像できます。その困りごとは多様ですが、誰もが困った経験があるはずで、だから「困っているひと」の存在理解は容易です。
しかし、「困っているひと」は目で見てわかりません。そのため、情報発信や他の支援機関とのネットワークを作りますが、それでも困っている若者との出会うことは簡単ではありません。なにより、困っていれば困っているほど、ひとは相談することが難しくなるからです。
そういった経緯もあり、これまで特に高校との連携を進めてきました。すべての高校生が困るわけではないですが、高校とのつながりを重層化することで、もし在校生、卒業(中退)生が困っていれば出会いの可能性を高めることができるからです。また、困り方が重くなる前に事前解決できることも考えられます。
そのやり方によって、困っている若者との接点が飛躍的にあがりました。東京都立秋留台高校では、進学、就職の他に、育て上げネットの支援機関に通うことを、一つの進路として認めていただいています。
就職でも進学でもない、高校卒業時の進路決定を認めた東京都立秋留台高校(工藤啓) - Y!ニュース
そのなかで困っている、困りやすい若者がいるのではないか、と考えた先のひとつが少年院でした。もともと鑑別所での情報提供を定期的に続けていたことなどからご縁があり、いまでは四カ所の少年院の中での支援、そして少しずつ退院少年の更生自立につながっています。
ただ、私たちだけでやれるものでもないため、複数の企業、NPOなどと連携をしています。そのきっかけになっているのが「少年院スタディツアー」です。多くのひとは少年院に入ったことがありません。少年院という場があることは知っていても、具体的に足を運び、どのような処遇教育がなされており、どんな方々が少年と寝食をともにされているのかを知るきっかけはあまりありません。
そのため育て上げネットでは、少年院に協力をいただき、年に複数回のツアーを開催しています。6月、7月にも実施予定であり、希望者は常に列をなしているとてもありがたい状況です。
現在、私たちは「少年院を出院した子どもたちに寄り添い、更生自立を支え続けるプロジェクト」で、理解者および少年の応援団となってくださる方を募っています。そして、1,000名の応援者を目指しています。少年が少年院を出て、私たちと出会ったとき「キミを応援してくれるひとたちは1,000名もいるんだ」を伝えたい。
少なからず現状を見て行けば、少年院に入院する、または退院する少年は孤立しやすかったり、人間関係に強い偏在傾向がうかがえます。更生自立を胸に秘めた少年にとって、1,000名のひとが支えてくれていることを伝えるため、そのお一人になっていただけたら嬉しいです。
理事長
工藤 啓