育て上げブログ

2021年09月29日

無業の若者、5割が望む「働く自信をつけたい」に応えるワークサンプル手法


いまから8年ほど前、育て上げネットでは東京工業大学の西田亮介先生(当時は立命館大学)に協力いただき『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析-』を刊行しました。 

 2,233名の無業の若者への調査のなかで、「支援機関/支援施設に足を運ぶ目的」を聞いています。そのなかでも突出して高い項目が「働く自信をつけたい」でした。 

 働く自信はどこでつけたらいいのか 


就職したい若者は、ハローワークや一般企業で求人をしている企業などを探し、就活をします。最近ではネットで探すひとも多いのかもしれません。しかし、就職活動に踏み出せない若者たちは、それらを利用しません。 

なぜなら、働きたくて就職先を探している若者を対象にしているサービスですから、「働きたくても働けない」「就活にいま一歩踏み出せない」若者は対象にしていません。 

 私たちはいつ頃、「働く自信」をつけたのでしょうか。まだ、働いたことがないとき、漠然とした自信で「働く」に飛び込むなかで育んだひともいるでしょう。職場でさまざまなひとたちからの評価、声掛けのなかで自分のよさを再確認できたひともいそうです。 

しかし、よい意味での根拠なき自信を持てず、職場などで働いた経験のない若者たち。働いた経験はあるけれど、働ける自信を育ませてもらえなかった若者たちが、育て上げネットを訪れます。 

この「働く自信をつけたい」に対するひとつの取り組みがワークサンプルという手法です。かなり端折ってワークサンプルを説明すると、疑似的な職場・仕事を環境を作り、そのなかで経験・体験を積んでいく方法になります。 

プログラムのなかで、仮想の会社を作り、参加者がそれぞれの役割を担い、同じく仮想の企業とビジネスをするというものです。実際、これだけでも一定の経験、自信につながります。それは毎回、若者が行うプレゼンテーションを見ていても強く感じるものです。具体的にどのようなシチュエーションでお客さまの課題を解決したのか。どのような技術を使って問題を除去したのかを堂々と話す姿は感動すら覚えます。 

ワークサンプルのラストピースに、あのリコー社が! 


これまでのワークサンプルで越えづらかったのは、参加者でチームを作り、仮想のお客さまからの受注をこなすことに、どうしてもリアリティが追い付かないことです。仮想のお客さまをするのは、プログラム講師やアシスタント、参加者同士など顔の見える関係者になります。 

 顔が見えるからこそ、安全な環境でチャレンジや失敗ができるよい側面もありますが、「働く自信をつける」期待に応えるにはやや物足りなさがあります。しかし、実際に業務をどこかから受注するとなれば、納期やクオリティを担保しなければなりませんので、簡単に発注してくれる企業が見つかるわけでもありません。 

 そのような課題を持つ私たちに力を貸してくれたのが、デジタルサービスのグローバル企業であるリコー(RICOH)社です。複合機のイメージが強いかもしれませんが、さまざまなデジタルサービスを提供する企業として、今回、デジタルスキルを習得して、働く自信とさまざまな「働く」を目指す若者のために協働してくださることになりました! 

‣ 若者向けデジタル支援プログラム「クリエイティブ・トライ」 

プログラム参加のお申し込みは始まっていますので、ご興味・ご関心があれば上記サイトよりお問い合わせください。 

先日、本プログラムの社外向けイベントをリコー社のご担当者をお招きして行いました。平日日中にもかかわらず、50名を超える参加者があり、NPOなど支援関係者も多かったようです。 

そのなかで、さまざまな地域で活動されている支援施設の方より質問やご連絡があり、このようなプログラムによって不安が解消されたり、働く自信をつけたりができそうな若者がいるので連携しましょうというお申し出もいただきました。 

これは大変ありがたいことで、今回の「クリエイティブ・トライ」に限らず、少なからずプログラムがオンラインで参加できるようになったことで、地域的な制限はなくなっています。また、ネット環境が家庭にあれば家庭から、支援施設で借りて参加ということも可能です。 

 今回はAdobe Photoshopなど特別なツールを使いますので、数に限りはありますが、参加者に貸与することも可能です。直接のお申込みでも、支援施設の連携によっても、デジタルスキルの習得と、ワークサンプルの手法による「働く自信をつける」に関心のある若者たちと、リコー社の協力のもと、出会い、一緒に学んでいけること、楽しみにしています。 

育て上げネット
工藤 啓


ページトップへ