働きたくても働けない
コロナの影響が続いています。多くの人が同じような環境におかれたとき、真っ先に影響を受けるのが生活基盤が脆弱なひとたちです。
この一年で多くのひとが仕事を奪われ、私たちの社会は多くの若者の命を失いました。それでも、同じ状況が長く続き、誰もが少なからずストレスが蓄積するなか、より苦しい生活にあるひとたちに手を差し伸べる余裕も失われているように思います。
大きな災害や被害があると、命をいかに守るか。生活を立て直すのかが急務になります。そのとき、同時に仕事も失っているのですが、雇用・労働の問題は後からじわじわ出てくるため、私たちの関心が薄れていたり、応援する余裕がなくなっていたりします。
命や生活に比べたら、「働く」というテーマは後回しになっても仕方がないかもしれません。しかし、これだけ長期化してくると、働きたくても働けず、収入の目途が立たない暮らしは、お金だけでなく、自分の居場所やつながりを喪失させていきます。
育て上げネットは、若者の「働く」と「働き続ける」を就労支援という切り口から応援してきました。支援プログラムの参加費を払うことが難しければ無料に、インターンシップや就職活動にかかる交通費を負担し、パソコンやWi-Fiを貸し出してきました。
しかし、もはや若い世代の経済的、精神的余裕は如実に失われています。販売業やサービス業という、若い世代の職場、雇用の受け皿は戻らず、アルバイト先が倒産したり、シフトが減少して収入が著しく減少しています。
これまで募集であふれていた、若者が経験していた仕事がなくなったことで、次の働き先が見つからず、仕方なく不慣れ、不安定な仕事を選び身体や心を痛める若者もいます。
10代、未成年という立場
どの世代にも苦しい立場の方がいますが、若者のなかでも10代、未成年の置かれた状況はかなり厳しいものがあります。
政府や行政の生活支援は世帯単位が基本で、扶養家族になっている未成年に資金が渡るかどうかは保護者次第です。
家庭から十分な経済支援を受けられるのであればよいのですが、もともと厳しい経済状況にある家庭では、高校生となればアルバイトをして自分の生活費だけでなく、家計の一部を背負うこともあります。
大学や専門学校では、教育ローン(貸与型奨学金)を抱え、学費や生活費の多くをアルバイトで賄っている学生もたくさんいます。また、中学・高校を出て働いている10代の若者もいますが、給与水準がもともと高くなく、この状況下で所属企業がダメージを受ければ、生活は一気にひっ迫します。
それでも、家庭単位での制度は、彼ら・彼女らの意思で活用することはできず、特に家族関係がうまくいっていない場合は、社会のみならず、家庭からも孤立し、ときに排除されてしまいます。
もはや「お金」を直接給付するしかない
これまで育て上げネットでは、直接「お金」を若者たちに渡すことはしてきませんでした。
しかし、現場に相談に来られる若者のなかには、少しでも家族の負担を減らすため一日一食以下にしたり、仕事を選べない状況から、危険な仕事や法的リスクを負うかもしれない仕事に就くことを決意しているような若者も来ています。
私たちにできることはなんだろうか。そのような考えを重ねるなかで、私たちが取り組むべきと辿り着いたのが、直接お金を給付することによって、10代の若者が次の仕事を探すにあたって、手に職、技術を身につける生活の余裕、時間の余裕を創りだすことです。
目の前の生活が脅かされているとき、働くことを止めることは、収入がなくなることです。そのため、十分に次のことを考え、必要なスキル習得に臨む時間の確保は至難の業です。しかし、これまでとは異なる仕事、新しい職場に向かうには、持っていなかった知識やスキルを習得しなければ、なかなかうまくいきません。
若者に50時間分の「学ぶ」余裕を
いま、私たちはクラウドファンディングを立ち上げ、若者ひとりあたり50時間分の「学ぶ」余裕を提供しようとしています。その企画は大阪府の目に留まり、また、お預かりしたご寄付と同額を追加で寄付(マッチングギフト)してくださる村上財団さまもサポートしてくれることになりました。
1,000円のご寄付は、若者が一時間働いて得る金額です。私たちは50時間分の余裕を、50,000円というお金の形に変えて若者に給付します。
特に、その時間で若者たちにITの知識やスキル、資格取得を目指してほしいと願っています。
どのような仕事でもいいのですが、いまコロナ禍でも有効求人倍率があり、若い世代にも雇用可能性がある職種は限られています。しかも、自宅に自分のパソコンやインターネット環境を家族が準備してくれるなら別ですが、そうでない場合、パソコンに触れること、ITの知識や技術を身に着ける機会を持つ未成年は限定的で、育て上げネットが日常の支援で出会う若者は、そのような機会がないままということも少なくありません。
これだけインターネット、テクノロジーが当たり前にあるなかで、また、たくさんの新しい仕事が生まれる一方、パソコンに触る機会がない環境にある10代の若者には、就労可能性が強く限定されます。
限られた仕事を奪い合うように生きるのではなく、望まない職場で生活の糧を得るために身を削るのではなく、ほんの少し世界を拡げ、選択肢を若者に提供したい。そのための余裕と機会を若者に作りたい。
そして願わくば、若者たちが新しい仕事と出会い、将来の可能性をいま以上に拡げされるよう、傍で支えていきたいと考えています。
私たちは、10代の未成年、いまをかろうじて生きる若者のため、一緒に支えてくれる応援者、寄付者を募っています。ぜひ、一緒に若者のいまと未来を支えてください。
寄付サイト:コロナ禍で苦しむ10代の若者にDX人材になる時間と機会を提供したい
育て上げネット
工藤啓