コロナ禍と同時に就活を迎えた子どもとお母さまの話をご紹介します。
2020年3月。想像していた就活とは全く異なる就活に挑むことになった優太さん(仮名)。コロナの影響で就活市場は厳しいけれど、先行き不透明だからこそ大手から内定をもらわなければ…と一生懸命就活に向き合っていました。
優太さんの悩みの種は、お母さまにもありました。
「大企業に就職できたら安心ね」
「○○会社?聞いたことないけど大丈夫なのかしら?」
「○○君は、大手に内定もらったそうよ。あなたにもできるわよ」
お母さまは激励のつもりなのでしょうが、優太さんにとっては重いプレッシャーとなり、無意識のうちに「自分がどうしたいか」よりも「お母さんにどう思われるか」と考えることが先行してしまいました。
なんとか頑張って就活を続けましたが、2か月ほどで限界がきました。スーツを着て面接に行くことも、パソコンに向かうこともなくなり、優太さんの就活は完全にストップしました。
次第に食事も一緒にとらなくなり、部屋に閉じこもった状態で、見かねたお母さまが相談にいらっしゃいました。
お母さまは「前のように普通に会話ができるようになりたい」と願っていましたが、その最初のステップとして「挨拶が返ってくる」ことを目標に、「おはよう」の声掛けから始めました。
昼夜逆転した生活、部屋から聞こえるゲームらしき音に心配も募るばかりですが、いまは「ゲームで誰かとつながっている」のだとポジティブに捉えて見守りましょうとお伝えしました。
おはようの声掛けを続け半年経ったころ、初めて小さい声で「おはよう」と返事が返ってきました。
数回の会話のキャッチボールができるようになったころ、家族が食事をしているところに優太さんが降りてきて、「自分なりに就職活動するから、ほっておいて欲しい」と言いました。本人が気持ちを伝えてくれたことは嬉しかったのですが、本当にほっといてよいものかという不安もあったので、結に相談し、優太さんと1つ約束をすることにしました。
――期限を決めて、そのときまでにうまくいかなかったり、困ったことがあったら、支援機関や信頼できる人に相談すること。
優太さんが最初にはじめたのは、学校に復帰することでした。オンライン授業で単位を取り、卒論を提出し無事卒業することができました。一方、就活の方は動き出している様子は見られず約束の時期になり、本人から「叔父さんに相談に乗ってもらいたい」という申し出がありました。叔父さんは、小さいころからよく遊んでもらっていて、優太さんにとって信頼できる大人のひとりでした。
そして今年3月から、叔父さんのサポートを受けながら2回目の就職活動をおこなえるようになりました。
コロナ禍で親も子どもと同じくらい不安に思うと思いますが、就活中の子どもを追い込む危険のある4つをお伝えします。
1. 兄弟や、友人などと比較しない
「○○君は優秀ね。それに比べあなたは…」と比較と激励はセットになりやすいので、やる気を損ねないように比較は避けましょう。
2. 子どもの行動や考えを一方的に否定しない
本人の考えがあるので、親が納得できない場合は、どうしてそう思うのか理由を尋ねましょう。
3.親の価値観や興味関心を押し付けない
親世代の就活と事情がかなり違うので、指示するような言い方は避け、時代が変わったから一緒に考えようというスタンスを伝えるようにしましょう。
4. プレッシャーを感じさせないようにする
行動していることを事実ベースで労い、就活について根掘り葉掘り聞かずある程度信じて任せましょう。
まずは親御さんがどっしり構えていることも大事ですが、心配は尽きないものと思います。そんなときは、私たちにお話を聞かせてください。ご家族にとって最適な方法を一緒に考えます。
子どもの将来相談窓口 結
蟇田