育て上げブログ

2020年08月31日

「働き方の選択肢を広げるオンラインプログラム」3日間で定員に達した理由を考える


予想とは異なる反響

8月24日、「はたらくスタートアッププログラム」についてのプレスリリースを出しました。

このプログラムはスイス・リー財団さまからの助成を受けて行う、若者に対する就労支援プログラムです。

働くことにさまざまな悩み、不安を持つ若者を中心に支援をしていくなかで、今回はコロナ禍の影響を受けた若者も対象となっています。

大切にしているのは、働き方の選択肢を増やすことです。就労支援は、そのひとに合った「働く」を一緒に考え、その実現に向けて伴走していくものです。その中には一般的な就職支援も含まれますが、もう少し幅の広い支援活動です。

しかしながら、多くの支援は最初から「就職」「どこかの企業に雇われる」ありきで相談や講座、支援コンテンツが設定されていないでしょうか。育て上げネットでは、3年ほど前、いつの間にか就労支援が就職支援に傾斜してしまっていることに危機感を持ちました。

それから #働き方拡張 というテーマを掲げ、若者に働き方を拡張して考え、選択肢を持ってもらう支援、従来の就労支援の理念に立ち戻り、新たな時代・新たな社会に合わせた支援を模索しています。

そのひとつの形として、今回の「はたらくスタートアッププログラム」を作りましたが、不安もありました。私たちは就職以外の働き方、例えば、フリーランスになることや起業をすべきだと考えていません。

就職以外の選択肢と聞けば、それは安定やキャリアの見通しから離れた働き方を若者に進めると受け止められてしまう可能性があるからです。

プレスリリースを出し、ウェブサイトを作って、若者および若者を支援する連携パートナーに、不安の中で情報を提示しました。

そうしたところ、私たちの予想とは異なる結果となりました。公開から3日で30名の定員は埋まり、全国の若者から申し込みをいただきました。いま、なぜこれほどまで申し込みが短期で殺到したのかについて、「はたらくスタートアッププログラム」の特徴をもとに、理由を考えています。

 

なぜ3日間で定員に達したのか

【1】働き方の選択肢を学び、実践してみること

本プログラムは、働き方の選択肢を少し広げてみること。そこには学びと実践を一緒に行うことを企図しています。最終的には就職活動に伴走するにせよ、その前にまずは、ということです。

自分のできることや、好きだったこと。就職には活かせないと思われるスキルも、ひとつの働き方の選択肢と捉える考え方に共感した若者がいたのではないでしょうか。

【2】オンラインという形式

コロナ禍の影響を受け、私たちは通常の支援活動を対面とオンラインの双方に取り組んでいます。若者も、社会もこれまでよりはインターネットを使った生活に慣れてきたところかと思います。

第一四半期も、本来は対面であったプログラムをすべてオンラインで実施しました。そのアナウンスに対して、若者たちの反応はネガティブなものではありませんでした。デバイスを持っていない、回線確保が難しい若者にはできる範囲で貸与なども行いました。

実際、ほとんどはオンラインではありましたが、一部、人数を限定して育て上げネットの事務所、PCルームを活用する若者、自宅から参加する若者が同時に講座を行ってみるチャレンジもしました。

そのとき、私が話をした若者たちはすべてがオンラインがよいというわけではないですが、他者と顔を突き合わせて、直接コミュニケーションをするよりも、オンラインでチャット機能、テレビ会議システムを使った方が、緊張せずに力を発揮しやすい。こういう形の方が働きやすいかもしれない、という言葉ももらいました。

オンラインがすべてよいのではなく、オンラインであれば参加しやすい。チャレンジしてみたい。そして、移動や通所というストレスから解放される、そういう部分を実践から知ることができました。

【3】何かを改善しなくても、「はたらく」を始められるかもしれない

就職は、どこかの企業に雇ってもらうことです。そのためには、自宅から職場に通えるようにならなければならない。長期に渡ってメンタルや体調が安定してからでないといけない。コミュニケーションの不得手は改善しないといけない。病気は完治させなければならない。

そのような改善がなければ、雇ってもらえないだろうという考えが、一部の若者にはあります。それは過去の経験などにも裏付けられているようです。しかし、最終的には就職を目指したいが、いまの環境や状態からでもやれることはないだろうか。少しずつ「働く」を進めながら、若者自身が希望する働き方に移行できないか。

いまの自分があり。改善プロセスがある。その先に「働く」がある。その認識が、もしかしたら、いまの自分や改善プロセスのなかでも、働ける道筋があるのであれば、それもチャレンジしてみたい。

そのような想いを持った若者にとって、今回のプログラムはやってみよう、という気持ちにつながったのではないかと思います。申し込みをしてくださった若者とはこれから個別に面談をしながら進めて行くプログラムです。

どのような若者が来てくれているのか見えているわけではありません。それでも、私たちが手探りの中で始めるこのプログラムに多くの若者が期待とともに、参加の手をあげてくれたことは、これからの就労支援について大きな転換のひとつになるものと、私自身も期待しています。

育て上げネット
工藤 啓


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