少しだけ社会が落ち着きを取り戻し、前に進み始めたように感じています。何も終わってないわけですが、家庭では子どもたちの生活が一変し、仕事では資金調達で奔走しながら、職員の安全と若者支援の継続を模索し続けています。
意思決定は大きなものでも、小さなものでも、現場の支援や仕事に影響を与えます。これまでのコミュニケーションの方法が少し変わるだけで戸惑いは増えますし、小さなシステムの変更も裏側では大変な苦労が生まれます。
劇的な変化に素早く適応しなければならないけれど、その意思決定の一つひとつが職員の負担につながると想像すると、安易に「こうしたらいい」「やっぱり戻してほしい」と口にするわけにもいきません。なかなか難しい局面が続きます。
僕自身が新たな日常に適応しようとしているなか、支援現場の「若者、子どもたちのためにできることをやっていく」は、本当に素晴らしい動きだと思っています。まだまだやりたいことと、できてることのギャップは大きいかもしれませんが、それでも多くの対人援助職、支援団体、行政などからオンラインで支援することの問い合わせが絶えません。
5月、6月には、「オンライン相談」および「オンラインインテーク(初回面談)」について、Microsoft Teamsライブイベントを使ってウェビナーを開催しました。100名を越える申し込みがあり、たくさんの質問や感想をいただきました。
事前配布テキストから一部抜粋
事前にテキストを配布させていただき、質問を受ける。ウェビナーでは、質問に回答する形で進めつつ、適宜、チャットでも質疑を取りました。このスタイルはとても評判がいいですね。
※第一回のウェビナーはYouTubeで公開しております。ぜひ、育て上げネットYouTubeチャンネルにご登録をお願いします!
そのような配信を通じて、たくさんの質問や疑問、不安の言葉を全国の対人援助職として働く方々からいただきました。みなさん、コロナ禍において対面で相談を続けるすることの難しさを感じられているようでした。
そして、対面に次いで相談者の情報量が多く取れるオンラインでの相談を考えるのは当然のことで、音声だけの電話やテキストだけのメールではないんですね。もちろん、デバイスや通信回線の課題はあるんですが、純粋に「じゃあ、電話とメールね」とは思わないですし、そうだとしたら相談者側に立っているひととは言えないでしょう。
できれば対面で、ダメならオンラインで。そして相手の状況に応じて電話もメールも。自分たちの安全だって重要なので、原則在宅で。考えるプロセスとしては多くの対人援助をされている支援者は同じように感じました。僕が話をしているひとたちとは。
ただ、そうは言っても理想と現実にはギャップがあり、オンラインで相談したいと思っていても壁が立ちはだかります。
大きな不安要素については、こちらに書きましたのでご興味あれば読んで見てください。
オンラインでの相談支援を阻む3つの不安(工藤啓) - Y!ニュース
僕らが学ぶ理論も、これまでの多くの実践も「対面」を前提にしているわけで、簡単に「オンラインでもやれるよね」とはなりませんよね。少しずつ対面ができるようになって、以前のやり方に戻せると安堵されている方もいらっしゃると思います。
一方で、対面支援を少しずつ開放するなかで、オンラインであればそっちの方が望ましいという若者の声もあり、対面だったら相談しづらかったけれどオンラインだったら相談したいという若者の声も出てきました。
相談員、対人援助職が何を考えようが、対面がよいという若者がいれば、オンラインだったら相談したいという若者がいるということです。そう考えると、僕らがやることは「どちらもできるようになっていく」ことであり、対面かオンラインかを選ぶのは私たちではなく、若者側という当たり前の状態を作っていくことですよね。
教育支援分野では、バウチャーとかクーポンを困窮世帯に渡して、習い事や塾を選べるようにする取り組み広がっていましょね。僕は昔からその考え方が好きです。その本人が主体となって、選択肢のなかから選べることが重要だからです。
「そこしかない」「他に選べない」状況は望ましいものではありません。だからこそ、対面かオンライン化という小さなところで対人援助職が留まってはいけないんです。得意不得意はあっていいし、どちらが好みもあっていい。
ただ、大切なのは相談の仕方についての選択肢を若者に提示しておくことで、そこを忘れてはいけないんだ。それが「支援」という言葉を使っている僕らの責任でもあると考えています。
できないこともたくさんあります。時間だってかかりますし、お金がないこともあります。それでも、せめて思考から行動レベルで、僕ら対人援助職・支援団体が若者のボトルネックになってはなりません。若者と社会の間に入る僕らがボトルネックになる可能性に自覚的であり、少しでもよいつなぎ役としてつながれるよう努力を重ねていきます。
工藤啓