育て上げブログ

2019年09月30日

「家族支援」と「家族ごと支援」を分けて考える


もう十余年前のことといえば遠くも感じますが、若者を対象にした支援政策は「若者」のみを支え、そのご家族は原則的に対象外だった時代があります。いまでは驚くようなことですが、お子さんのことで心を痛めたご家族が相談に来所されても「本人が来ないと何もできない」というようなことが実際にありました。

現在はご家族の方だけで来られてもお話をお聞きすることができますし、それが当たり前の感覚になっていることだと思います。

困りごとの主体はだれ?

ただ、ちょっと複雑になりますが「家族」を支援することと「家族ごと」支援することは異なります。
それは保護者や兄妹といった「家族」が持つ悩みにアプローチするのか、ご本人を基本軸にしつつも「家族グループ」に包括的に関わるのかということです。

例えば、お子さんが学校に行きたくても行けないとか、自立心があっても自宅から出られないということが主訴であれば、ご本人の意思を尊重しつつ家族を含めた「家族ごと支援」を行います。

しかし、複雑になりがちなのはお話を聞いていくうち、家族の方がが困りごとをお持ちの場合があります。
例えば経済的なことや、関係不和のようなことです。そういった家族が中心にある場合は「家族支援」に入ることになります。

これらの困りごとが完全に分断されていることは稀で、少なからずリンクしていることも多いので、並行的に支援を行っていくようになります。

支援を分ける意味

「家族支援」と「家族ごと支援」は、比較的同じことに見えてしまいますが「個々の悩みに関わるメンバー構成が変えられる」ことが重要なポイントです。

ご本人を含むご家族を、ひとりの援助職員で受け持つシーンが物理的に増えると、相談をする側だけでなく、相談を受ける側にも負担が大きくなります。ときに板挟みになりますので、そのとき物理的に孤立していると苦しいはずです。

育て上げネットでは、子ども・若者の支援と、ご家族の支援はある程度分かれた体制を作っています。「家族ごと支援」が必要ならその両者が合わさって支援に関わります。完全に分けられないときもありますが、意識的にでも分けておくことが複雑性に対処するために重要だと考えるからです。

"家族支援政策"-つぎのステップ

若者支援に限らず、これからの施策や政策のなかで、家族も支援対象になるというのは当たり前のこととして進んでいきますが、ひとつの施策や政策の規模が小さくなればなるほど、現場では少ない人数が多様な役割をこなさなければならなくなります。

若者向けの取り組みにご家族だけで来られて当然という流れはそのままに、より一歩前進するのであれば、家族支援と家族ごと支援が十分に配慮された状況を作り出していくことを大切にするようにしていかなければなりません。

少し話がそれましたが、いま、家族向けのセミナーや相談会は、これまで以上のペースで申し込みが埋まっていく傾向にあります。ただ、広く家族向けというのは、帯に短したすきに長しになりやすくもあります。

10月には、少し範囲を限定した保護者、ご家族向けのイベントを開催してみることにしています。


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家族向けの相談は、お話を聞かせていただくことから始まります。
ご家族に困りごとがなければ、ご本人の意思を中心に「家族ごと支援」になりますが、もしご家族も困りごとを持っていらっしゃれば「家族支援」もさせていただきます。

現在、各地域で家族支援をされている団体・組織と、また、若者や子どもたちを支援されている団体・組織と連携を密にしていっています。前段でも書きましたが、まずは状況の整理、そして言語化をお手伝いさせてください。その上で、困りごとの解決のため最も適したものは何かを(育て上げネットという団体にこだわらず)一緒に考えさせてください。

育て上げネット
理事長 工藤 啓


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